古いプログラム言語は倒産のトリガーになる可能性が高いと叫ばれ始めています。いわゆる「2025年の崖」問題です。この「2025年の崖」問題により、日本は12兆円以上の大きな損失が発生するであろうという予測も発表されています。
では、この「2025年の崖」とはどういった問題なのでしょうか?なぜ、倒産のトリガーになるのでしょうか?
中小企業を直撃する「2025年の崖」問題
2025年の崖とは
「2025年の崖」とは、2018年に公表した経済産業省の経済産業省のワーキンググループ「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が公表したレポートのフレーズのことで、日本が現在のままのレガシーシステム(旧式の基幹系システムや情報システム)で進んでいった場合、2025年以降、日本経済は年間12兆円もの経済的損失を被り続ける可能性があると発表されました。
この年間12兆円というのは、情報サービス産業の売り上げとほぼ同額で、このままでいくと、2025年以降は情報サービス産業が稼いだ分がすべて損失になるということになってしまいます。
では、日本が抱えるレガシーシステムとは、どういったことなのでしょうか?
レガシーシステムとは
現在の日本企業のプログラムシステムは、90年代に作成され、それがいまだに引き継がれていたりするケースが非常に多くあります。
例えば、Windows98やXPなどの時期に導入された給料計算や交通費の清算といった仕事管理用のPC向けソフトが未だに多くの職場で使われていたりします。
Windows7のサポートが切れようとしている今でも、社内のメインパソコンは「Windows XP」であると公言している会社も多く見受けられます。
こういった旧式のプログラムソフトを使い続けていることを「レガシーシステム」といいます。
では、この「レガシーシステム」にはどういった問題点があるのでしょうか?
レガシーシステムの問題点
そもそもこうした、現在ではほとんど使われなくなったプログラム言語でのソフトを使用し、企業独自の業務に対応させるために、機能の追加や拡張といったさまざまなカスタマイズが何年にもわたって繰り返されると、システム自体が肥大化し、かつ、中身のすべてを理解している技術者がいなくなります。
と同時に、新卒で入社した若手エンジニアが過去の古いプログラム言語を知らなかったりします。
すると、何か突発的なバグが発生した場合、対応もできなければ、復旧もままならず、結果、企業に莫大な時間とお金の損失が発生し、最悪の場合、倒産するきっかけ(トリガー)になったりします。
そのため、最新のプログラムソフトの導入や仕事の業務方法を最新のシステムに刷新することが重要なのです。
が、しかし、現状は問題なく稼働をしており、さらに最新のプログラムソフトの導入には莫大な費用がかかったりするため、最新のプログラムに切り替えることもなく、これといった刷新が図られないまま今日に至っている中小企業が非常に多くあります。
そうした場合、近い将来、中小企業のシステムがある日を境にすべて使用不可となり、新たなシステムを導入する費用も捻出できず、多くの中小企業で同時多発的に倒産が起こる可能性が高いといわれています。
では、この問題は日本のみで起こっていることなのでしょうか?
海外の情勢
2014年に行われた調査では、ITに対する投資姿勢を「極めて重要」と考えているアメリカの企業は75.3%だったのに対し、日本企業はたったの15.7%でした。
また、ITに対する予算増額理由においては、アメリカの企業が「製品・サービス開発」「ビジネスモデル変革」が多数を占めた一方、日本企業は「業務効率化」「コスト削減」が主な理由で、ここでも大きな意識の違いが見られます。
この意識の差は、最新のプログラムソフトを導入する大きな障壁となっています。これは数字を見ても明らかでしょう。
また、新興国の企業ではレガシーシステムの資産が元々ないので、すぐに最新のパッケージやクラウドサービスで先端のシステムを築きデジタルテクノロジーをビジネスに取り込むことができます。
以上のことから、対策が遅れているのは、先進国では日本ぐらいであり、そのため、今後日本企業は世界から取り残される可能性が非常に高くなっています。
いよいよ重要となる社内エンジニア
今後、AIや5Gなどの最先端のデジタルテクノロジーが次から次へと出てきます。
そのため、日本におけるすべての企業において重要なことは、それらの最新テクノロジーに対応した最新のプログラムソフトに移行することです。そして、業務プロセスを見直し、分断されているデータが相互活用できるよう業務システムを全てつなげることが必要です。
これは、IT企業のみではなく、全職種の企業において絶対です。
そのためにも今後はすべての会社においてエンジニアの存在が重要であり、社内に優秀なエンジニアがいるかいないかで、会社の業績は大きく変わってくることになります。
よって、企業としては、経理や営業よりもまずエンジニアの人材を獲得することが必須であり、いかに優秀なエンジニアを囲い込むかを考える必要があります。
「エンジニアなくして、企業の成長はなし」
いよいよ、日本企業の意識を大きく変えるべき時が迫って来ています。
まとめ
レガシーシステムによる「2025年の崖」が大きな課題を孕んでいることが理解できたと思います。
今後、日本企業が生き残っていくためにも、今あるレガシーシステムはどんどん捨てるべきです。
しかし、それは、すぐできる簡単なことではなく、自社にとって本当に必要な業務機能とは何かを突き詰め、現行の基幹業務システムの機能を棚卸してみる事がポイントです。そうすると、今はほとんど使っていない機能が数多く見つかることでしょう。
こうして、現状の把握と整理ができた後は、最新のシステムの導入とデータの移管作業を行います。そのためにも、日本企業は考え方を変え、エンジニアの採用を活発にし、IT部門を強化していくことが重要です。