2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることが発表されました。
しかし、これは文部科学省が定める教育課程を各学校が既存の授業の中で取り組んでいくもので、「プログラミング」という科目が増えるわけではなく、小学生がプログラミング言語を覚えていく授業でもないそうです。
では、そもそも小学校で学ぶプログラミング教育とはどういったものなのでしょうか?その意図とは??
2020年から小学校でプログラミング教育が必修科目へ
まずは、小学校でプログラミング教育を導入しようとなった経緯や背景をまとめていきます。
小学校の学習指導要領が改定された背景
著名な教授たちが著書などで以下のような見解を挙げています。
「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」マイケル・オズボーン氏(オックスフォード大学准教授)
「2011年に小学生になった子供の65%は将来、今は存在していない職業に就く」キャシー・デビッドソン氏(ニューヨーク市立大学教授)
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」アラン・ケイ氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校准教授)
これらは、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて進展していたり、進化した人工知能 (AI) が様々な判断を行い、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来 (第4次産業革命) が、社会や生活を大きく変えるとの予測からきているもので、
“今、学校で教えていることは、時代が変化したら通用しなくなるのではないか”
“人工知能の急速な進化が、人間の職業を奪うのではないか”
という不安の声が多く上がってきました。
そこで、「予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合い・関わり合い、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となるための力を子どもたちに育む学校教育の実現を目指す。」ことを目的とし、学習指導要領が改定となったのです。
プログラミング教育を導入するに至った背景とは
ヨーロッパを中心とした多くの国で90%の職業が基礎的なITスキルを必要とするため、既に学校教育のカリキュラムの一貫としてプログラミングを導入しています。
また日本では、2030年には59万人ものIT人材が不足すると言われています。
それらのことから、子供の頃からIT力を育成して裾野を広げておくことが必要と判断し、小学校におけるプログラミング教育の必修化が実現されたのです。
プログラミング教育の狙いとは
プログラミング教育のねらいとしては、プログラミングを覚えるわけではなく、
1.「プログラミング的思考」を育むこと。
2.プログラムの動きや良さ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気づくことが出来るようにするとともに、コンピュータなどを上手に活用して身近な問題を解決したり、より良い社会を築いたりしようとする態度を育むこと。
3.各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること。
小学校では「プログラミング言語を覚えたり、プログラミングの言語を習得したりすること」自体を、目的としているわけではありません。
小学校におけるプログラミング教育とは
学校教員・教育委員会に向けて出された「小学校プログラミング教育の手引き」の中では小学校段階のプログラミング教育についての基本的な考え方や思考についてわかりやすく解説し、教師がプログラミング教育に対して抱く不安を解消しています。
具体的には、「未来の学びコンソーシアム」という民間協業によって設立された機関で発表されている内容があります。
・理科:電気を無駄なく使うにはどうしたらよいかを考えよう
・算数:正三角形をプログラムを使ってかこう
・音楽:様々なリズム・パターンを組み合わせて音楽をつくるプログラミング学習
などが挙げられていますが、各科目まだ例が少ないのが現状です。
中学校におけるプログラミング教育とは
中学校からは本格的なプログラミング学習がスタートします。
プログラミングに関する内容を充実(「計測・制御のプログラミング」に加え、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」について学ぶ)
高等学校におけるプログラミング教育とは
高校では「社会と情報」「情報の科学」の2科目からいずれか1科目を選択します。
必履修全ての生徒が必ず履修する科目(共通必履修科目)「情報Ⅰ」を新設し、全ての生徒が、プログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学びます。
「情報Ⅱ」(選択科目)では、プログラミング等について更に発展的に学びます。
最後に
2020年からスタートするプログラミング教育によって、子供たちは社会に出る前から「プログラミングに対するスキルや知識を身につけていること」が前提となっていきます。
こうしたITスキル・リテラシーの高い子供たちが社会人となったとき、大人である私たちは「話が通じない化石」のような存在にならないよう、今からでもプログラミング的考え方を身につけていくべきだと思いました。